スポーツ障害とは
 

スポーツ障害とは、比較的弱い力が運動器の同一部位に繰り返し加えられることによって起ります。スポーツをすることで同じ動作を繰り返し、骨、筋肉、腱および靭帯等を損傷することを言います。

それに対して、急激に大きな力が骨や関節、筋肉や靭帯に働いて骨折、脱臼、断裂を生じることをスポーツ外傷と言って区別します。ここでは、スポーツ障害について説明します。

ゴルフなりテニスなり、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ほとんどのスポーツはクラブ、ラケット、バットを振る、ボールを投げる、蹴る、ドリブルをする、打つということを体の片側だけで行う運動です。ということは、当然左右差ができバランスが崩れてきて、負担がかかってしまう部分が出てきます。そういった部分に障害を起こし、痛みが出てしまいます。
わずかな力でも繰り返し負担がかかることで大きな損傷につながってしまいます。

当院では、疲労して硬くなった筋肉をほぐすほか、体のバランスを整え軸を安定させ、関節の角度を正常化させることで障害を少なくし、パフォーマンスを高める治療を行います。

障害には必ず原因があること、一旦発生すると経過が長くなりやすいことなどから運動開始前後のメディカルチェックや日頃からの運動器のケアを心掛け、何よりも予防することが大切です。

スポーツ障害の種類

 

1.肩

野球肩

繰り返す投球動作によって種々の肩関節構成体が損傷されて、痛みを生じる障害の総称です。前方では前方関節包、肩甲下筋や腱板、上腕二頭筋長頭腱、棘上筋などが障害され、後方では後方関節包、Bennet骨棘、上腕三頭筋付着部などが障害されて起こります。

Little Leaguer's shoulder

発育期の野球選手に見られ、過度の投げ込みにより利き腕の上腕骨の近位骨端線が離解します。

 

テニス肘

上腕骨の外側上顆(肘の外側)に痛みが出ます。手関節の背屈筋群のoveruse(使いすぎ)によって起こり、テニス以外の日常生活動作でも発症し、女性に多い症状です。テニスバンドをよく使用します。

野球肘

発育期の野球選手に起こり、投球動作時、内側では強力な牽引力が働くためにX線像で骨端線障害、骨棘や遊離体の形成を見ます。
 

Little Leaguer's elbow

投球動作時、外側では捻転力を伴った強い圧迫力が加わって、上腕骨小頭に離断性骨軟骨炎や嚢腫を形成します。この障害は将来、変形性関節症へ進行し、疼痛が著しくなって可動域制限も出現します。そのために投球の一時中止、カーブやシュートなど変化球の投球の禁止、投球回数や登板回数など症状や所見に応じた制限を行って、発育期の少年に長く野球ができるように指導します。

3.手関節(手首)

三角繊維軟骨複合体損傷(TFCC損傷)

三角線維軟骨複合体(TFCC)とは、手関節尺側部(手首の小指側)に存在する靭帯と線維軟骨の複合体です。この部分が外傷的にまたは加齢により損傷を受けると、尺側部(小指側)の鈍痛、尺屈(手首を小指側に曲げること)・回内外(手首を回転させる動き:ドアノブを回したり、鍵を回したりする動き)時の疼痛増強が認められ、握力の低下をきたします。
腕立て伏せなどの手をついて体を支える動作で痛みが出ます。

4.大腿部(ふともも)

ハムストリング肉離れ

ハムストリングとは、大腿部(太もも)の後面にある半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋のことを言います。スタートダッシュ時やジャンプをした時など、急激に強い収縮力が働いたときに多く起こります。大きく引き伸ばされた時にも起こります。
筋肉と腱の移行部付近に血腫が溜まる為、早期の適切な処置がとても重要になります。

5.膝関節部

オスグッド・シュラッター病  

発育期によくジャンプをする男子に好発し、脛骨結節部(すねの骨の上の部分の骨の出っ張り)に運動時痛と圧痛が認められ、骨性の隆起が触れます。
原因は脛骨粗面の骨化部に繰り返す牽引力がかかって発症する骨端症の1つです。

ジャンパー膝

バレーボールやバスケットボールなどのジャンプを主に行うスポーツに起こります。
膝蓋骨(お皿の骨)下端と膝蓋靭帯の付着部に疼痛が発生する障害で、いわゆる膝蓋靭帯炎のことを言います。X線像で膝蓋骨下端に萎縮像や骨棘形成を見ます。発育期に見られるものをシンディング・ラーセン・ヨハンソン病と言います。

ランナー膝

ランニングによって生じる膝関節痛の総称で、変形性関節症、腸脛靭帯炎、膝蓋軟骨軟化症などが原因となります。狭い意味では膝蓋軟骨軟化症を指します。膝蓋骨と大腿骨の間の関節で摩擦が起きてお皿の裏側が損傷します。膝蓋骨に圧痛があり、お皿の周囲で痛い感じがします。

腸脛靱帯炎

大腿骨外側上顆(太ももの骨、膝近くの外側)の骨性隆起部と腸脛靭帯(太ももの外側を縦に走っている大きな長い靭帯)とが過度の摩擦によって炎症が起こり、疼痛が現れます。症状が悪化すると歩行や階段昇降などの日常生活でも疼痛が生じます。長距離走の選手に多く発生する症状で、バスケットボールなどでも見られます。

鵞足炎

脛骨内側部(すねの骨の膝近くの内側)に付着する薄筋・縫工筋・半腱様筋の3つの筋の付着部に過度なストレスがかかり、炎症が生じるものです。腸脛靭帯炎と同様、長距離走の選手に多く発生する症状で、バスケットボールなどでも見られます。

6.下腿部(すね)

脛骨過労性骨膜炎(シンスプリント)

疲労骨折と同様にランニングなどにより繰り返される足関節の底背屈(足首の曲げ伸ばし)および足部の内外反(足首を内側外側に捻る動き)により引き起こされます。
特に、後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋・ヒラメ筋などのエキセントリックおよびコンセントリックな収縮の繰り返しにより、骨膜・骨間膜・筋腱移行部などに炎症を起こすと考えられており、足部のマルアライメント(偏平足・回内足など)がみられる人に多く発生します。

アキレス腱炎・周囲炎

下腿三頭筋からアキレス腱にかけてのトレーニング不足、overuse(使いすぎ)、柔軟性の欠如や老化、グランドサーフェスの変化、踵部(かかと)が不適当な(材質、サイズ、ヒールの高さ、摩耗など)シューズの使用などの原因により、強制的に腱が過緊張または圧迫によるストレス状態に陥り、腱または腱を覆う腱傍組織に炎症が生じます。